本当に抑圧されているのは誰か ~「フェミニズム」と「ジェンダーフリー」は別物なの?~
【実際に抑圧されているのは『男』でも『女』でも『ゲイ』でもなく、『社会から求められるジェンダー規範に乗れない/乗りたくない人たち』ですよ!】
・kmizusawaの日記 - 順番が違う
http://d.hatena.ne.jp/kmizusawa/20060712/p1
フェミニストには、弱者男性の面倒を見てやる義理はねぇ!というご意見。激しい違和感。
確かに義理はないんだけどさ。もしフェミニズムが「ジェンダーフリー」なり「男女平等」なりをを実践しようという運動なのだとしたら、弱者男性のジェンダー問題も、当然視野に入ってくるんじゃない?っていうのが僕の考えだから*1。
いやね、僕はフェミニストの現場で運動している人間ではないから「フェミ業界」の内情は知らないし、「バックラッシュ!」には「『フェミニスト=ジェンダーフリー/男女平等』ってわけではない」みたいなことが書いてあったから、僕の今回の記事は「ジェンダーフリーや男女平等を謳うフェミニスト」に限って話を進めさせていただきますけれども。
僕の認識では、「ジェンダーフリー」ってのはおおまかに言って、「あらゆる性がジェンダーという社会規範の抑圧・押し付けからくる生きづらさから解放され、自由に生きる権利を得る」ことが目標なんだよね?
もしそうだとしたら、「男」と「女」と「同性愛者」を別のものとして考える必要は、そもそもないんですよ。
男でも女でも同性愛者でも、社会から与えられた「男らしさ」「女らしさ」「ゲイらしさ」の規範を、特に疑問に思わずに実践してる人はいる。そういう人は「ジェンダー規範から来る生きづらさ」なんて感じないでしょ?むしろ「男らしく」「女らしく」「ゲイらしく」あることが、彼・彼女等の幸せに繋がっている。
フェミニストは、「すべての女性は女性であることの苦しみを共有している」とシスターフッド的にいうかも知れないけど、僕は「女性というジェンダー特有の既得権」ってあると思うし*2、そうした既得権に乗って幸せを謳歌している女性は、たくさんいると思いますよ。こういう人たちは、社会の需要と個人の供給がマッチした、「幸運な人たち」。
でも、世の中はそんな「幸運な人たち」ばかりじゃない。「男だけど男らしさに馴染めない」「女だけど女らしさに馴染めない」「ゲイだけどゲイらしさに馴染めない」。そういう人たちもたくさんいる。
で、そういう「ジェンダー規範に乗れない/乗りたくない人たち」が「規範に載れなくたって別にいいじゃん!そんなとこで差別すんなYO!」と声を挙げるのが、「ジェンダーフリー」ってことなんだと僕は思ってる。
実際に抑圧されているのは「男」でも「女」でも「ゲイ」でもなく、「社会から求められるジェンダー規範に乗れない/乗りたくない人たち」ですよ。社会規範に乗れている人たちは、どんなジェンダーを持っていようと、抑圧なんかされていないんですよ。対立しているのは「男VS女」ではなく、「規範適応者VS非(不)規範適応者」ですよ。ここまでは、以前別館でも書いたとおり。
| http://d.hatena.ne.jp/Masao_hate/20060603/1149304643 フェミニストやメンズリブ(マスキュリスト)が主張すべきは、「女は抑圧されている」でも「男は抑圧されている」でもなく、「ジェンダーの規範に乗れない/乗りたくない人間は抑圧されている」ということですよ。でこれは、「社会に適応できない/したくない人間は、抑圧されても仕方がないのか」という、より大きな問題に繋がっていくと思うんですよね。 |
【フェミニズムとジェンダーフリーは別物なのか】
僕はジェンダーフリーの思想は素晴らしいものだと思うし、共感もする。だからそれを実践している(と思い込んでいた)フェミニズムにも興味がある。だからフェミ的な思考をしていると自認するkmizusawaさんに、
| 今のところはやっぱりフェミニズムは世の中のあり方に対して「女性にとってどうか」ってのを第一に考える思想・運動なんだから。 |
みたいなことを言われてしまうと、もの凄く萎える。あぁ、「フェミニズム」ってのは、あくまで「女の、女による、女のための運動」でしかないんですか、と*3。
もしフェミニズムが僕が感じたように「ジェンダーフリー」を目指すものではなく「女性のための運動」なのだとしたら、僕はがっかりする。っていうか、した。そうなのだとしたら、僕は「『ジェンダーフリー』には賛成だけど『フェミニズム』には反対です」という立場を取る。だってそれ、「ジェンダーフリー」じゃないもん。
【すべての社会運動は、『社会規範からの抑圧に対する抵抗』じゃね?】
はてな別館からの引用でも少し触れているけど、僕はジェンダーフリーに限らず全ての「社会運動」は、「社会規範への抵抗」だと思ってる。表にまとめると、↓みたいな感じ。
| ジェンダーフリー | 「ジェンダー」という社会規範への抵抗 |
|---|---|
| 人種解放運動 | 「人種(白人至上主義)」という社会規範への抵抗 |
| ニート | 「労働」という社会規範への抵抗 |
| オタク | 「ライフスタイル」という社会規範への抵抗 |
| 不登校 | 「学校」という社会規範への抵抗 |
| 非モテ・喪男 | 「恋愛」という社会規範への抵抗 |
| ひきこもり | 「社会」そのものへの抵抗 |
この考えでいくと、これらの「運動」は、「社会規範への抵抗」という意味で、すべて同じ目的を持つものに見える。それは、
「社会規範に適応しない/適応できないからといって、差別すんなYO!」
ということ。すべての社会運動は、「社会規範という抑圧(正義?)」への抵抗運動なんですよ。
だから僕は、これらの「社会規範への抵抗運動」をやっているにも関わらず、「女のことしか考えない」「ひきこもりのことしか考えない」「ニートのことしか考えない」「非モテのことしか考えない」ような運動は、好きじゃない。自分とは違う属性を持つ他者への「社会規範からの抑圧」に、あまりにも鈍感だと思う。酷いダブスタだと思う。
だから、「ジェンダーという社会規範」へ抵抗しているにも関わらず「シスターフッド」を掲げ、「男VS女」の図式でモノを考えるような系統の「フェミニスト」には、違和感を覚える。
kmizusawaさんは、
| 男性に配慮してないからフェミニズムはダメだってのはなんか変だよね。 |
と書く。これに対し、僕はハッキリと「それはダメな運動です」と答えたい。少なくとも僕にとって、それは酷いダブスタであり、「ダメな運動」です。
確かに差別が可視化すらされていない段階では、自分たちのことを強く主張する必要があったのだと思う。でも、フェミニズムがある程度の成果を挙げてきたいま、「女性のための運動」から「(男女関係無い)ジェンダー規範からくる抑圧への抵抗運動」へと、フェミニズムは変化してもよい時期なのではないでしょうか*4。
*1 ここに載ってる考えとほぼ同じ。
*2 こういうこと言うと怒られそうだけど、たとえば「主婦になりやすい」のも立派な既得権だと思うし、「消費による自己実現」をやりすいのも女性だと思う(ここで大月隆寛が言っているようなこと)。問題は、既得権を持ってない場所へ自分が行きたいと思ったときに行けないという、流動性のなさ。
もう少し具体的にいうと、「そんなに働きたくないのに『男らしさ』に囚われて過労死させられる男性」も、「外で働きたいのに『女らしさ』に囚われて家に閉じ込められている女性」も、どちらも同じように「ジェンダーという社会規範」の被害者であり、同じように不幸だということです。これは「不幸競争」するようなことではなく、「同じように不幸」なのです。
*3 kumizusawaさんも「いまのところは」と言っているわけで、変化の流れはあるんだろうけれども。
*4 ここらへん、はてぶでのsivadさんの意見「まあ、黒人奴隷解放運動が白人弱者を想定してなかったようなもの。でもそろそろ変わるべきだとも思う。 」に同感。黒人差別の喩え、あまりにも的確で感動しました。
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受信: 2006年7月18日 (火) 20時15分
» 「ジェンダーフリーではないフェミニズムには反対」論の自意識過剰と不寛容 [*minx* [macska dot org in exile]]
以下は最近本家ブログで続けている「弱者男性」論への対応シリーズの番外編。id:kmizusawa さんの「順番が違う」という記事への反論というか「違和感」を書いた Masao さんという方の「本当に抑圧されているのは誰か ?「フェミニズム」と「ジェンダーフリー」は別物なの?... [続きを読む]
受信: 2006年7月21日 (金) 16時28分
» フェミニズム 社会運動 ジェンダーフリー 男女 抑圧 当事者 [Life is Survival @はてな]
macska さん経由で読んだ本当に抑圧されているのは誰か ?「フェミニズム」と「ジェンダーフリー」は別物なの??を読んで感じた「激しい違和感」。 Masao さんの、ジェンダーによって様々な人々が抑圧されているという話しは理解できる。でも、 Masao さんは社会運動をすごく... [続きを読む]
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» 2006-07-22 [Life is Survival @はてな]
id:macska:20060721:p1 経由で読んだMasaoさんの記事について、 id:kleinbottle526:20060721:1153478480 で書いたのですが、はてブにMasaoさんからコメントいただいたので、ちょこっと書きます。 アレは「実際に運動しろ」ってことでなく、すべての運動が共感できるであろう... [続きを読む]
受信: 2006年7月22日 (土) 06時46分
» 力を得たフェミニズムとその信奉者の人たちに、今考えてほしいこと [Le Voyage]
純粋なココロ 2.0: 本当に抑圧されているのは誰か ~「フェミニズム」と「ジェンダーフリー」は別物なの?~ このエントリと、それに対するレスポンスである *minx* [macska dot org in exile] - 「ジェンダーフリーではないフェミニズムには反対」論の自意識過剰と不寛容 こ..... [続きを読む]
受信: 2006年7月22日 (土) 23時19分
» フェミニズムによる新たな価値観の投下に怯えるな [蛟]
男女お互い新たな利益を享受するために、今ある既得権を失うことで、不安に怯えているようにも見える。
Le Voyage: 力を得たフェミニズムとその信奉者の人たちに、今考えてほしいこと
[続きを読む]
受信: 2006年7月23日 (日) 14時17分






コメント
まぁ、全体のためと称して自分たちのだけのために活動するというのは良くある手口ですわな。
ここは意地悪く「おまえら本当は自分のことしか考えてないだろ。この嘘つき野郎」と言うべきでしょうな。
投稿 万打無 | 2007年4月27日 (金) 05時08分
快楽殺人者や常習的レイピストやサービス残業を強いる経営者や
緑十字に天下りする官僚も肯定されるんですか?
社会規範的にどれも問題ありますよね。
彼らを肯定できないのなら、他人の権利を侵害するのを否定する
弱い自由主義ってことになりますか。
この場合、引きこもりに生活保護は渡さなくていいんですよね。
投稿 kk | 2007年8月11日 (土) 03時10分
結局、フェミニズムってのは、
女性共の身勝手が許される社会を形成することが
目的なのでございますよ。
それから、男性諸君が ”男であることに誇りを持てない”
今の世の中では、ニートや引きこもりが増えるのは
至極当然です。
その原因を作りかつ、それにつけ込んで、
男性を卑下しては、女性の権威を上げようとするのが、
フェミのやり方なのですがね。
投稿 次郎 | 2007年10月24日 (水) 14時55分
kkさん、あなたはフェミと同じように、「前提がおかしい」
です。常識の範囲内でお答え下さい。
投稿 次郎 | 2007年10月24日 (水) 14時57分